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第690話 連れていかれた

著者: 花崎紬
last update 最終更新日: 2024-12-02 18:00:00
この間、森川晋太郎はその御守で入江紀美子とちょっとした喧嘩になっていた。

「ゆみちゃん、それ外した方がいいと思う。

変な細菌がついているかもしれないし、ネックレスが好きなら、俺はもっといいのを買ってあげるから」

晋太郎は眉を寄せながら、ゆみに言った。

「嫌だ!」ゆみは彼を断った。

「ゆみはこれが好きなの、これをかけたら夢を見てたの!」

「夢?どんな夢?」

「仙人のお姉さんと、とてもきれいなおばさんがゆみと遊ぶ夢だよ!

隣にワンちゃんもいたの!真っ白な毛並みで、とても大人しくて可愛いワンちゃん!

御守をつけたら夢を見るなど、晋太郎は不思議に思った。

「よくその夢を見てたのか?」

晋太郎は続けて聞いた。

ゆみは頷いた。

「この御守をつけてからね、ゆみは毎日その夢を見るようになったんだ!

今でもはっきり覚えてるの!

ただ……その仙人のお姉さんがおばさんが言っていた話、ゆみはよく分からなかったの……」

晋太郎から見れば、ゆみが言っていることはあまりにも突拍子だった。

だが、ゆみが楽しんでいるのを見て、彼はそれ以上何も言わなかった。

ただ、ゆみがあの人の弟子になること、何故入江紀美子が自分と相談しなかった?

たとえ自分がまだ子供の父親の身分で彼女とゆみのことを相談していないとしても、彼女の独断でこんなにも簡単に決め手はいけない!

いかんせんそれはゆみの将来に関わる事情だから!

藤河別荘にて。

昼ご飯の時間になったので、竹内佳奈が子供達を呼びに2回に上がった。

部屋に入って、佳奈は入江佑樹と森川念江に「お昼だよ」と呼んだ。

そして、佳奈はゆみがいないことに気づいた。

勇気と念江も驚いて佳奈を見た。

「ゆみ、下にいなかった?」佑樹は緊張してきた。

「庭は?」

念江も心配してきた。

ことの重大さに気づいた佳奈は、慌てて降りてボディーガード達に確かめに行った。

佑樹と念江も彼女の後ろについておりてきた。

佳奈はボディーガードに、「ゆみちゃんを見なかった?」と尋ねた。

「見ました、先ほど森川社長が連れていきました」

ボディーガードは頷いて答えた。

「森川社長って?晋太郎さんのこと?」

「はい」

その返事を聞いて、佳奈はほっとした。

「なんだ、連れていくのなら教えてよ」

そう言って、彼女は別荘に入った。

佳奈が
ロックされたチャプター
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    「ごめん……ゆみ……お母さんが悪かった……」入江紀美子は先ほどの失態の悔しさで涙が止まらなかった。子供はまだ幼く、まだ何も分からないのに。彼達にとって松沢楠子は母の秘書に過ぎず、悪い人だと思わないだろう。全ては自分が悪かった。もしもう少し早く、楠子と狛村静恵の関係に気づいていたら、こんなことにならなくて済んだ!杉浦佳世子も胸が痛んで目元が赤く染まった。「紀美子、私はもう警察に通報したから、あいつらは必ず捕まる。もう泣かないで、私達で子供達を病院につれていこう」そう言いながら、佳世子も涙を堪えきれなかった。入江佑樹は大体これまでの経緯が分かってきた。楠子が細工をほどこした食べ物を彼達に食べさせ、それを最近母が知った。しかし、彼女は一体どんな細工をほどこしたのかのだろう。もしかして自分達の体に害があるものだろうか?佑樹は頭を垂らして黙り込み、恐怖を感じた。病院にて。紀美子は慌てて子供達を検査に連れていった。検査室の外で焦りながら待っていると、紀美子の携帯が鳴り出した。佳世子は放心状態の紀美子を見て、代わりに電話に出た。「もしもし、どなたですか?」佳世子は尋ねた。「入江さんでしょうか?」電話からは男の声が聞こえてきた。「どうかしました?」「警察の者です。先ほど通報のお電話をいただきまして会社のビルに到着しましたが、あなたの許可がないと入れないようです」警察は説明した。「今本人に代わりますので、ちょっとまってください」佳世子は携帯を紀美子に渡した。「警察が会社に入ろうとしてる」紀美子は携帯を受け取った。「入江です」「入江さん、容疑者を連行したいのですが、受付に知らせてください」「分かりました、電話します」すぐに紀美子は受付に連絡を入れた。受付は警察をビルに入れ、事務所のフロアに向かった。警察は楠子のいる秘書事務室のドアを押し開けた。資料を整理していた楠子は、警察を見て一瞬動きが止まった。しかしすぐ、彼女は冷静を取り戻した。「松沢楠子か?我々は通報を受けたため、あなたに犯罪行為の疑いで同行してもらいたい」楠子は大人しく警察の前に来て、手錠をかけられた。「一度病院で入江社長に会いたいのですが、いいですか?」「話がある

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    杉浦佳世子がまだ考えているうちに、入江紀美子が急に立ち上がった。しかし次の瞬間、彼女は力が抜けたように思い切り椅子に倒れこんだ。佳世子は慌てて彼女を支えたが、怒りを抑えきれなかった。「紀美子!警察を!こんなことは警察を呼ぶしかない!こんな悪女、法律で裁いてもらうのよ!」「違う……」紀美子は佳世子を押しのけ、再び立ち上がった。「子供達に……会いに行かなきゃ……彼達を連れ戻さなきゃ……」紀美子はふらふらと個室を飛び出し、佳世子はカバンを持ってついていった。車に乗り込み、紀美子は震えながらボディーガードに、大急ぎで学校へと頼んだ。「今から警察に通報するわ!」佳世子は携帯を取り出した。紀美子は佳世子を構っている余裕がなかった。今は、少しでも早く子供達を病院に連れて行きたかった。本当に耐えられない!子供達にエイズを感染させるなんて信じられない!彼達はまだ幼いのに!彼達の人生はまだまだこれからなのに!なのに……何故こんなことがおこるのだろう!紀美子は爪を掌に食い込ませながら、胸元の痛みで窒息しそうになった。彼女は、静恵と松沢楠子がどれほど狂っているのか、また、こんな人間としてあるまじき行為がなぜできたのか、想像がつかなかった。車は暫く走った。すぐに紀美子は子供達の学校についた。佳世子は、途中で紀美子の携帯で学校の先生に連絡をいれておいた。そのため、先生はすぐに子供達を連れてきてくれ、紀美子は慌てて彼達を車に乗せ、病院に向かった。途中、紀美子はずっと彼達をきつく抱きしめ、一刻も離さなかった。入江ゆみと入江佑樹は息が詰まりそうだった。「お母さん……」ゆみは虚ろな目で紀美子を見て尋ねた。「どうしたの?ゆみ、怖い……」佑樹も母のこんな姿は初めてみた。まるで大きなショックを受けたようだった。彼は辛うじて佳世子の方へ振り向いて尋ねた。「佳世子おばさん、お母さんはどうしたの?」「君たち、楠子が持ってきたものを食べた?」佳世子は真剣な顔で聞き返した。「秘書のおばさん?」ゆみは頷いた。「一緒に食べた!」紀美子の体は激しく震えた。彼女は娘を見て、真っ青になった唇で尋ねた。「なぜ食べたの?」ゆみはただ瞬きをした。どう答えたらいいか

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第770話 彼女たち、いつ知り合ったの?

    最後尾の車が静恵がスピードを上げるのに気づき、慌ててアクセルを踏み込んだ。静恵が目的地に到着すると、その車は少し離れたところに止まった。運転手は静恵の背後に回り込み、草むらに身を潜めてしゃがんだ。そして、バッグからカメラと録音機を取り出し、静恵の様子を観察し始めた。しばらくして、白い車がやって来て、楠子が降りてきた。草むらに隠れている男は、二人の出会いを夢中で写真に収めた。少し離れたところで、静恵は車の前に寄りかかり、腕を組んで楠子をにらみつけた。「あたしが言った通り、あたしの血を佑樹とゆみの食べ物に入れて、エイズを感染させろってさ。やってないの?」楠子は眉をひそめた。「言われた通りにやったわよ。それでも不満なの?」静恵は声を荒げた。「その態度は何なの?!良心がなくなったの?!」楠子も怒りを露わにした。「静恵、妹の借りを人生をかけて返してきたわ。これ以上何を求めるの?」「やったと言ったわね?」静恵は冷酷に言った。「じゃあ、どうして佑樹は何ともないの?赤い発疹もないし、熱もない。何も起こってないじゃない!」楠子は調べたことを話した。「エイズには潜伏期があるの。いつ発症するかなんて分からない。早ければ数日、遅ければ十年以上。保証なんてできないわ!」静恵は納得できなかった。「そんなに長く潜伏できるはずがない!絶対何もやってない!」楠子は「言われた通りにやったわ!信じないなら、何を言っても無駄よ!」と強く主張した。「いいわ、信じてあげる。けど、嘘だと分かったら覚えておきなさい!」静恵は言った。楠子は「もう用事がないなら、帰るわ」と言い、車に戻って静恵と別れた。草むらに隠れていた男は、撮った写真と録音をすべて紀美子に送信した。中華レストラン江海。紀美子は佳世子と一緒にランチを楽しんでいた。最近の佳世子は食欲が増して、満腹になってもさらに注文したがっていた。紀美子が追加注文しようとしたその時、突然メッセージが届いた。あの男の記者からであった。すぐに、紀美子は送られてきた画像の中に見覚えのある二つの姿を見つけた。画像を開いた瞬間、彼女の手が震えた。楠子と静恵?彼女たち、知り合いだったの?紀美子の顔色が悪くなるのを見て、佳世子は驚いて手を止

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第769話 会って話したい

    晋太郎は眉をひそめた。「君たち、本当に行くところがないのか?」晋太郎の声を聞いて、二人はさっと振り向いた。晴はにこやかに声をかけた。「晋太郎、早く来てお茶しようよ!」隆一も続いた。「晋太郎、これ、誰かが父に贈った最高級のプーアル茶だよ!試してみて!」晋太郎は二人の前に座ると、晴が湯呑みを差し出してきた。彼が一口飲むのを見て、二人は揃って言った。「どう、美味しいだろう?」晋太郎は二人を一瞥し、「何もないのに親切にされるとは。何か裏があるな」と皮肉を言った。晴は頭を掻きながら、気まずそうに笑った。「実はちょっとお願いがあるんだ」隆一もそっと手を挙げた。「俺も……」晋太郎は晴に目を向けた。「今度は何?」晴は答えた。「君のワイナリーからお酒を取って、俺の義父に贈りたいんだ」晋太郎は鼻で笑った。「まだ結婚してないのに義父呼ばわりか?」晴は言い訳をした。「今夜佳世子と帰省するんだよ。結婚したら義父になるじゃないか」晋太郎は言った。「欲しい酒があるなら、自分で取りに行けよ。何で俺にいちいち言うんだ?」晴は真剣に答えた。「やっぱり君に相談しないとね。君のワイナリーには世界中から集めた最高のお酒があるからさ」晋太郎は彼を無視し、隆一に目を向けた。「君は何?」隆一は興奮して言った。「晋太郎!俺に彼女を紹介してくれないか?」晋太郎は我慢できず、二人を睨みつけた。「ここを結婚相談所とでも思ってるの?」晴と隆一はお互いに顔を見合わせた。二人はすぐに晋太郎の背中を叩いたり、足を揉んだりし始めた。隆一は言った。「晋太郎、まだ紀美子を完全には手に入れてないんだろ?俺が手助けするよ!海外で色々学んだから、女性の心を掴むのは得意なんだ!」晴も言った。「俺もだよ、俺と隆一で毎日一つずつ作戦を考えれば、きっと一ヶ月以内に紀美子にプロポーズできる!」晋太郎は冷たく二人を見て、「君たちは座ってろ!」と命じた。「わかった!」「了解!」二人はすぐに元の位置に戻った。晴が言わなければ、プロポーズの件を忘れそうだった。しかし紀美子はまだ彼と付き合うことを了承していない。いきなりプロポーズとは、ありえるのか?晋太郎は二人を見つめた。「

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第768話 再建への準備

    静恵は慌てて否定した。「次郎、そんなつもりじゃない!」「そうか?」次郎は眼鏡を押し上げ、冷たい目で彼女を見た。「じゃあ、何のためにここで俺を待ってるんだ?」静恵は震える手で次郎の胸に触れた。「ただ……一度だけでも……」次郎は周囲を見渡しながら言った。「なるほど、庭でスリルを味わいたいんだな」静恵は歯を食いしばって答えた。「そうなの!」次郎は微笑んだ。「わかった、君の望みを叶えてあげよう」一方、晋太郎は虹膜と顔認識システムの登録を完了していた。ドアを開けると同時に、監視装置を設置して佑樹に自分の情報を削除させた。子供たちを連れて帰る前に、晋太郎はふと庭の入口の方に目をやった。かすかに何か聞こえた気がしたが、すぐにその音は消えてしまった。あまり気にせず、子供たちを寝かせた。翌朝、晋太郎は念江と佑樹を連れて帰る準備をしていた。出発前に、森川爺が彼を呼び止め、疑わしげな目で尋ねた。「昨夜、戻ってきたのは何のためだ?」晋太郎が答える前に、念江が先に口を開いた。「おじいちゃん、俺が来たかったんだ」森川爺は一瞬驚いたが、すぐに微笑んだ。「この小さな子は、おじいちゃんに会いたくなったのか?」佑樹も話を合わせて、「彼は数日前にドキュメンタリーを見て、空き家のお年寄りをもっと気にかけなければと思って来たんだよ」と言った。空き家のお年寄りか……森川爺は無意識に考え込んだ。自分ももうそんな年になってしまったのだろうか。そうかもしれない。もしこの子供たちが来なければ、この別荘の雰囲気はずっと寂しいものだった。森川爺は晋太郎に言った。「次はあの小さな女の子も連れてきなさい」晋太郎は答えず、子供たちの手を引いて古い家を後にした。車に乗ると、晋太郎はすぐに紀美子に電話をかけた。紀美子はすぐに電話に出て、「昨夜はどうだった?」と尋ねた。「君は俺のことを気にしてるのか、それとも子供たちが心配なのか?」晋太郎は興味深そうに尋ねた。晋太郎の声を聞いて、紀美子は昨夜何も起こらなかったことを悟った。彼のからかいに取り合わず、「私は忙しいから、これで切るわね」と言って電話を切った。電話が切れた画面を見ながら、晋太郎は不満そうに眉をひそめた。この女性には少

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