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第330話 本当に縁起が悪い。

Author: 花崎紬
last update Huling Na-update: 2024-09-19 19:00:01
 晋太郎は冷笑し、話題を逸らした。「今日のような重要な会場に、なぜ彼は一緒に来なかったんだ?」

「私たちの子供たちほど重要なものはないから」紀美子は「私たち」という言葉を強調して言った。

晋太郎の目に火が点いたのが見えた晴は、すぐに間に入って言った。「晋太郎!もうすぐランウェイショーが始まるから、早めに席に着こう。後で人が多くなるかもしれないから」

晋太郎が引き止められるのを見て、佳世子は紀美子を慰めに来た。「紀美子、気にしないで」

紀美子は冷ややかに視線を戻し、「トイレに行ってくるわ。先に行ってて」と言った。

「一緒に行くわ!」

佳世子は紀美子を心配し、朔也に目配せしてから紀美子と一緒に離れた。

二人がトイレに向かって歩く中、佳世子は尋ねた。「紀美子、明日晴犬を呼んでいい?」

紀美子は歩みを止め、真剣な顔で佳世子を見つめた。「彼はあなたのボーイフレンドになったんでしょ?」

「付き合ってるわ」佳世子は鼻を触りながら答えたが、少し気まずそうにしていた。「でも安心して、私たちが一緒に出かけることを絶対に内緒にして、ボスに口を閉ざさせるから!」

紀美子は安心した。彼女と晋太郎はどうやら相性が悪いらしい。

そうでなければ、今日に至るまでこうなった理由が何なのか、どうして毎回顔を合わせるたびに衝突するのか?

最後の展示ブースを通り過ぎるとき、紀美子は突然不機嫌そうな叱責の声を耳にした。

その声に引き寄せられるように振り返ると、一人の女性社員が質素な服装をした、白髪の老人を押しのけているのが見えた。

「何度も言ってるでしょう?汚れた手でこの生地を触らないでって!展示している生地は高価なんだから、あなたが弁償できると思ってるの?」

老人はよろめき、必死に立ち直ろうとして言った。「みんなが触ってるんだ。私が触るのはどうしていけないんだ?」

「そんなことが言えるの?」女性社員は嘲笑しながら答えた。「他の人たちは大物だけど、あなたは何者なの?」

そう言いながら、さらに老人を押しのけようとした。「早く出で行って!そうでないと、警備員を呼んで追い出させるわよ!」

佳世子は怒りを覚え、「紀美子!何て人たちなの……えっ?!紀美子!」

佳世子が話し終わらないうちに、紀美子がすでにその二人のもとへ歩み寄っていた。

紀美子は老人のそばに歩み寄り、手を差し伸べて
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    Huling Na-update : 2024-09-19
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    Huling Na-update : 2024-09-19
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    Huling Na-update : 2024-09-20
  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第336話 集中して。

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    Huling Na-update : 2024-09-20
  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第338話 謝り。

     ゆみは、どうやって謝罪しようかと躊躇していると、向こうのふっくらした女性がすでに声をかけていた。「お兄さん、火をつけてあげるわ」と、ふっくらした女性は晋太郎を見つめ、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに言った。晋太郎は突然現れた女性を怪訝そうに見つめ、まだ口を開いていないうちに、女性が彼の手をがっしりと掴んだ。すぐに手を引っ込めた晋太郎は、不機嫌そうに女性を睨み、「手を出すな!」と冷たく警告した。それでも女性は、さらに恥ずかしそうに晋太郎を見つめながら、彼の腕を軽く叩いた。「あらあら、そんなに遠慮しないで。わかってるわよ」晋太郎は眉をしかめた。「何がわかるって?」女性の顔はさらに真っ赤になり、唇を噛みしめながら笑いを抑え、彼に身体を寄せた。「あの、あなたの気持ちがね。恥ずかしがらなくていいのよ」と言った。「???」晋太郎は困惑した。この光景を見た紀美子や他の人たちは、みんな驚いて言葉を失った。これって、一体どういう状況なの?佳世子は驚いて言った。「まさか、ボスの魅力があまりにも強すぎて、女性が自ら助けに来るなんて?」晴は笑いをこらえた。「でも、晋太郎の今の顔色、すごく面白くないか?」佳世子は、晋太郎の顔色が暗くなっているのをじっくりと見て、「ぷっ」と笑い出した。「ボスのその魅力は致命的だな!!」紀美子は特に面白いとは感じなかった。むしろ、その女性が現れたことが少し不自然に思えた。考えながら、紀美子は女性がやって来た方向を見た。すると、少し離れたところで、ゆみが佑樹に引っ張られて戻ってくるのが見えた。ゆみの顔に浮かぶ不満の表情を見て、紀美子はすぐに状況を理解した。紀美子は険しい表情で立ち上がり、ゆみの前に歩み寄った。ゆみはびっくりして、悲しそうな顔で紀美子を見上た。「ママ……」紀美子は眉をひそめ、声を低くして厳しく問いかけた。「ゆみ、あのおばさんが急にここに来たのは、あなたの仕業でしょ?」ゆみは涙をポタポタと流しながら、「ママ、ごめんなさい、私が間違ってたの……」と呟いた。紀美子の心の中で怒りが燃え上がり、「ゆみ、あなたがしたことがどれほど危ないか分かってるの?」と叱った。ゆみは「わぁっ!」と大声で泣き出した。「ママ、私はただ、彼がここにいるのが嫌だったから……」「だからって、

    Huling Na-update : 2024-09-21

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    森川貞則は口元から血が出るまで殴られた。入江紀美子は拳を握ったまま、貞則の言葉が悪魔の囁きのように彼女の頭の中で響いていた。森川晋太郎は次郎と同じく彼の息子なのに。まさか貞則がこれほどまで腐っていたとは!白芷さんは彼の中でそんなに下賤な存在なのか?笑いながら彼女のことを次郎のおもちゃと言うほど?この時、外から数名の警察が入ってきた。彼達は激怒している晋太郎を抑え、貞則を連れていった。紀美子は晋太郎を見た。彼の俊美な顔にはこれまで見たことのない苦しみが浮かんでいた。その真っ赤な両目は、恨みと殺意で満ちていた。彼女は彼を抱きしめ、彼に永遠に彼の傍にいると言おうとした。しかし彼女の両足にはまるで鎖で縛られたかのように、一歩も動けなかった。彼女には身をもって彼の苦しみを感じることができないのに、どうやって彼を慰めるべきだろうか?警察署から出ても、晋太郎はずっと黙っていた。藤河別荘に戻ってから、彼は自分を紀美子の書斎に閉じ込もり、紀美子すらも入れさせなかった。子供達は紀美子の所に、晋太郎の状況を聞きに来た。入江ゆみは紀美子の膝に上り、柔らかい声で尋ねた。「お母さん、お父さんはどうしたの?」紀美子は複雑な気持ちでゆみの顔を撫でながら答えた。「お父さんはちょっと悩み事があるの。だから、そっとしてあげよう、ね?」入江佑樹も眉を寄せながら尋ねた。「何か良くないことがあったのか?」「警察署に行ってきたんじゃないの?」森川念江も尋ねた。「お爺ちゃんが何かお父さんを怒らせることを言ったの?」紀美子は汚らわしい話を子供にしたくなかった。「警察署に行ってて、ちょっとした揉め事もあったけど、お母さんはあまり詳しく説明してあげられないの」紀美子はそうやって丁寧に答えるしかなかった。「私達今できるのは、お父さんが落ち着いて書斎から出てきたら、優しくしてあげること、いい?」「彼にも思い詰ることがあるんだ」佑樹は言った。「お父さんだって、アイアンマンではなく人間だもん!」ゆみは兄を睨んで言った。「その……アイアンマンだって中身は人間だ」念江が妹に注意した。「ゆみ、念江も君の無知さに呆れてるぞ」佑樹も笑って妹にツッコミを入れた。「もう、お兄ちゃんうるさい!

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第836話 全て知っていた?

    「お前は次郎に何をしようとしている?」森川貞則は目を大きく開いた。「雑種が!何をしようとしているんだ!」「俺は気が短いから、1分間だけ待ってやる。あまり俺を待たせすぎると、あいつがどうなるか知らんぞ?」そう言うと、森川晋太郎の携帯画面には、小原が設置したカウントダウンが映された。時間が一刻一刻と過ぎていき、貞則の額には汗が滲んできた。彼は歯を食いしばった。晋太郎が次郎に手を出せない方に賭けているようだ。残りの時間が10秒を切ると、小原は拳銃を出して森川次郎の頭を狙い定めた。それを見た貞則は身体を激しく震わせた。「やめろ!何でも教えてやる!銃を降ろさせろ!早く!」「小原」「はい、晋様!」小原は銃を下ろした。貞則の表情が急に緩み、落ち着いた。彼は視線を再び入江紀美子に向けた。「当時、俺は君の父親ととあるランドマークの開発権を競争していた。他に2社の社長も参加していた。俺は他の2人に沢山の賄賂を渡して、彼らに手を引いてもらった。しかし君の父親だけはどうしようもなかった。俺がいくら働きかけても、全然動じなかった!それどころか、色んな場面で俺の妨げとなった!全く融通が利かなかった!俺が殺したと言えるか?俺を敵に回すなど、彼が無謀だったんだ。」貞則の説明を聞き、紀美子は震えが止まらなかった。「それだけの原因で、うちの父を殺した、と?」紀美子は感情をむき出しにした。「それでも人間のやることか?」「たとえ俺がやらなくても、彼はいずれ誰かに殺されていただろう」貞則は蔑んで言った。「帝都をどんな町だと思ってやがる?ここはジャングル、弱肉強食の世界だ!まだその屍を拾えただけでラッキーだと思え!」紀美子はここまで恥知らずの人に会うのは初めてだった。自分が人を殺したのに、まるで正義の味方かのような言い方をしている。彼女は貞則の屁理屈に呆れ、平手打ちをしようとした時、晋太郎に止められた。「あんたは、紀美子の父がその土地を手に入れ、自分が彼に負けるのを恐れていただけだ!」晋太郎はあざ笑いをしながら言い続けた。「あんたはそんな卑劣な手段を使うこと以外、何も出来なかったんだ!違うか?」「俺は、自分が間違ったと思わん!人は金や権力の為に生きるものだ。感

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第835話 ヤツを見逃す

    森川貞則は晋太郎の話を聞かず、怒鳴り続けた。「またその下賤な女を連れてくるなんて、俺に恥をかかせるつもりか?早く弁護士を雇ってこんか!俺の冤罪を証明してくれ!そこに突っ立ってて死にたいのか?」「下賤な女」という言葉を聞き、晋太郎は一瞬で険しい顔になった。彼は貞則の前に来て、いきなり彼の襟を掴んだ。「これ以上紀美子のことをそんな風に呼んで、ムショの中でどうなっても知らんぞ!」自分の息子に襟を掴まれた貞則は、顔が真っ赤になった。「俺は何もやっておらん、何故ムショに入れられるんだ?愚か者め。簡単にあんな噂を信じてどうする?」「噂、だと?」晋太郎はさらに一歩貞則に近づいた。「俺がこの耳で聞いたのだ。ただの噂じゃない!」晋太郎の話を聞き、貞則急に悟った。「お前だったのか?俺の書斎に盗聴器をつけたのは!ありえん!ありえないぞ!あんな厳重なセキュリティを突破して侵入してくるなんてありえない!」その話を聞いた紀美子が驚いて晋太郎を見た。彼女は晋太郎が口を滑って子供達のことを言い出すのではないかと心配した。貞則はこの先、刑務所に入れられるのは決まっているが、事前に手を打たなければならない!彼女はどう晋太郎に注意するかを考えているうちに、晋太郎は口を開いた。「あんなザルみたいなセキュリティ、俺が突破できないとでも思ってんのか?大した自信だな。MKにはトップレベルのハッカーが何人いると思う?奴らに突破できないセキュリティなど、存在しない!」紀美子は杞憂だと分かって、ほっとした。晋太郎の頭脳は極めて賢く、子供達のことを漏らす可能性はなかった。貞則の顔は真っ青になり、目線を少し離れた所にいる紀美子に落とした。「ははっ!」貞則はいきなり大声で笑い出した。「お前、とんだ恋愛脳だな。たった一人の女の為に自分の父を刑務所に送るなんて!よその人達にどう見られるか、考えたことあるのか?そんなことをしたら天罰に当たる!冷血なやつめ。お前が殺されるのを待ちきれん!」この世の中で一番最悪な言葉は、親から子供への呪いであろう。紀美子は晋太郎を連れて帰ろうとしたが、彼にはまだまだ聞きたい話が沢山あると分かっていた。晋太郎は貞則の襟を離し、背を伸ばして彼を見下ろした。「そんなこと言って、次郎のヤツのこ

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第834話 一緒に入るわ

    杉浦佳世子のメッセージを読むと、入江紀美子は悲しくて仕方なかった。森川晋太郎は、一目でそのメッセージが見えた。彼がそれについて聞こうとすると、自分の携帯も鳴った。同じく佳世子からのメッセージだった。退職届だ。下までワイプすると、編集された文書もあった。「森川社長、今までお世話になりました。私の今の状態では、恐らくどんな仕事もこなせませんので、辞めさせていただきます。紀美子は私の大親友ですから、彼女が悲しまないよう、あなたのすべての優しさと安全感を与えてあげてください。」晋太郎はそのメッセージを紀美子に見せた。紀美子は涙を堪えて彼を見た。「佳世子からのメッセージだ」紀美子は携帯を受け取り、メッセージを読むと、涙をこぼした。何度も涙をふき取りながら、胸が塞がれたかのように声が出なかった。「彼女は何処にいくか言ってない?」晋太郎はティッシュを渡した。何を言っても無駄だと分かっていながら、紀美子に尋ねた。「分からないわ。教えてくれなかった」紀美子は首を振って答えた。晋太郎は黙り込んだ。このことは佳世子だけではなく、田中晴にとっても致命的な打撃であった。一番愛している人が、静かに姿を消すなんて、彼はその痛みを誰よりも分かっている。午後6時。晋太郎と紀美子は子供達を藤河別荘に送り返した。別荘から出てきて、晋太郎は杉本肇に警察署に行くように指示した。紀美子は晋太郎が自分を彼の父である貞則に合わせようとしているのが分かっていたが、若干抵抗があった。あんな人、会うたびに吐き気がする。紀美子がどう断ろうかと考えているうちに、肇は晋太郎に向って口を開いた。「晋様、ちょっとお話がありますが、よろしいですか?」晋太郎は暫く考えてから、紀美子に言った。「車の中で待っててくれ」紀美子は頷き、車のドアを閉めた。晋太郎と肇は少し離れた所に行った。「晋様、塚原先生のプロフィールを入手しました」「それで?」「彼は孤児で、幼い頃に母を亡くされ、色んな人の援助を受け育ったようです。彼の故郷は納多海ですが、その当時の隣人に話を伺うと、彼は幼い頃から物分かりが良く向上心があったとのことです」「彼の父親の手掛かりは?」晋太郎は暫く考えてから尋ねた。「おかしいの

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第833話 一度正式に会うべきかと

    「えっ?どんなニュース?」入江紀美子は冗談を飛ばした。「紀美子、兄さんが君のことが分からない嘘を見抜かないとでも思ってるのか?MKのニュースがこんなに轟いて拡散されているのに、君がは知らないワケがないだろ?」渡辺翔太は笑って言った。「はいはい、見たわよ。森川貞則が連れていかれたんだねわね」紀美子は笑いを禁じ得なかった我慢できなかった。「その反応、あんまり嬉しくないみたいけど?」翔太は尋ねた。「どんな気分でそれを受け止めればいいるか分からないの」紀美子はため息をついた。「お兄ちゃん。、私は実の両親のことを覚えていないから、実はあまり彼達に特別な感情を抱いていない。貞則にを法律の裁きを受けさせるのも、両親の実の娘としてそうしなければならないからだったけど……だ」翔太は暫く黙った。「分かってる。そう聞くべきじゃなかったかも聞き方が悪かったな」「お兄ちゃん。嬉しくなるのはいのは、あなたやおじ様とおば様のほうじゃない?」「そう言えば、彼達とはしばらく随分の間連絡を取っていないよな?」翔太は尋ねた。「今回の事件を解決したのは晋太郎のお陰お蔭だ。、君たちも仲直りしたし、皆で一緒に飯でも食べようるべきだ」「いいわ、あなたが時間を決めて」「じゃあ、土曜日にしよう。子供達もつれてきて」「分かった」夕方。紀美子がは子供達を迎えに出かけようとして、会社を出るとたら、見なられたメルセデスマイバッハが入り口に停まって止めていた。彼女が車に向って歩くと、運転席の手をしていた杉本肇も降りてきた。「入江さん、晋様もが一緒に子供達を迎えにいくそうですきます」一緒に行く?そんな簡単なことではないと、紀美子は思った。森川晋太郎がいきなり現れたのは、きっと何か緊急なことがあったからだ。紀美子は車に乗り込むとみ、晋太郎は目を瞑って休んでいた。「他にやりたいことが何か言いたいことがああるんじゃない?」紀美子は尋ねた。晋太郎はゆっくりと目を開き、彼女を見た。「女の勘ってやつか?」「他の人女の勘かは知らないけど、私の勘はなかなか当たるわ」紀美子は微笑んで答えた。晋太郎は紀美子の手を繋ぎ、彼女を懐に引き寄せた。「どうやら君は、俺今日の計画にあまり関心してい

  • 会社を辞めてから始まる社長との恋   第832話 同行を願う!

    森川貞則が出て暫く経ってから、一人のボディーガードが慌てて走ってきた。もともと機嫌が悪い貞則は、ボディーガードのその挙動を見て、怒りを更に燃え上がらせた。「やかましい!」「貞則様、大変です!外に沢山の警察が集まっています!」「何だと?」「警察が、沢山来ています!」警察が来た?貞則は一瞬で険しい顔になった。ボディーガードに時間を稼げと指示しようとすると、警察は既に玄関から彼の所に向ってきていた。貞則はすぐ心の中の戸惑いを抑え、落ち着いた様子で警察を見た。警察は彼の前に来て、警察手帳を見せながら言った。「どうも、刑事事件捜査課の伊野木将一です。通報を受けたため、殺人の疑いで、署まで同行を願う」貞則の態度は冷え切っていた。「証拠がないなら、同行を断る!」「森川元理事長、我々がここにいるのは、十分な証拠を掴んでいるということです。20年前の殺人事件、及び前日貴宅で起きた執事殺害事件について、調査のご協力を願いたい」貞則の顔は曇った。その2件、極めて隠密に実行したのに、何故警察にバレたのだろうか?相手が答えないのを見て、将一は携帯を出して録音を再生した。録音を聞いた貞則は、思わず身が震え、目を大きく開いた。それは間違いなく自分の声だ!書斎での会話だった。書斎……誰かに侵入されていたのかと、貞則は横目で書斎の方を眺めた。「申し訳ないが、同行を願う!」警察はさらに強い態度で同行を求めた。貞則の表情は幾度と入れ替わり、暫く沈黙すると、無力感をあらわにした。やはり、世の中には漏れない秘密など存在しない。執事が連れていかれた時から、今の状況への準備を取るべきだった。貞則は警察について行った。狛村静恵は、外の騒ぎを聞いて動揺したが、やはり部屋から出られなかった。なぜなら、岡田翔馬がまだ捕まっていないからだ。彼女は今、じっとしていなければならなかった。でないと、自分の命も危うくなる!MKの記者会見は、入江紀美子も生中継で見ていた。その頃、貞則が会社を追い出されたニュースは、既にネット中に拡散されていた。紀美子は暫く、晋太郎がそうした理由が分からなかった。しかし、すぐにもう一通のトレンドが上がってきた。「驚き!MKグループ元理事長・森川貞則氏が、

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